• 日本の発酵食品を代表する『味噌』。
    飛鳥時代の7世紀ごろから日本人の食生活を支えてきている。

    味噌は大きく原料で分類すると『米みそ』『麦みそ』『豆みそ』『調合みそ」の4つに分類されます。
    今回はその味噌の8割を占める米みそ(米、大豆、食塩)についての話をします。

    その米みそには白味噌と赤味噌に分類されますが、そのほとんどは、
    普段私達が一般的に食している味噌汁に使用している赤味噌です。(※一部地域を除く)
    茶褐色のみそですので、黒い色のみそを「赤味噌」と呼ばれる方もいますが、
    それは八丁みそを代表する豆みそか、豆みそと米みそ(赤味噌)をブレンドしている
    赤だし味噌ですので、違う種類のみそです。
    その赤味噌は全国各地のそれぞれの味噌蔵メーカーが何千種類もの味噌を作っています。
    その違いはなぜ生まれるのか?
    今回はそれをわかりやすく説明したいと思います。

    味噌(赤味噌)の味の違いを生む7つのポイント

    1.原料の違い 


    米は輸入米または国産米、ほぼ国産米ですが、米にも品種や産地で甘味や旨味が違います。
    大豆も輸入大豆または国産大豆、輸入大豆は中国、カナダ、アメリカなど様々、
    国産大豆も品種や産地、大きさ等様々です。
    塩は大きく分けると食塩と言われている精製塩と海塩や天然塩と呼ばれる自然塩に分かれる。
    味噌に使われている塩は、ほとんどが輸入された天日塩や岩塩から精製された「食塩」ですが、自然塩を使用したこだわった味噌もあります。

    2.麹歩合(米と大豆の配合割合) 


    大豆10に対する米(麹)の割合を「麹歩合(こうじぶあい)」と言います。
    例えば大豆10に対して米が8の場合は「麹歩合8割」「8割麹」と表現したりします。
    数字が10より小さければ大豆が多い味噌、
    10より大きい数字の場合は米の割合が多い味噌となります。
    ちなみに同じ原料、同じ環境、同じ塩分で仕込んだ味噌は
    麹歩合が高い米の割合が多い味噌の方が、
    米の炭水化物がブドウ糖に分解されるため、やや甘いお味噌に出来上がります。
    赤味噌はこの麹歩合の違いで、お味噌の味が全く変わってくるのです。
    大源味噌の商品は麹歩合を全て表記していますので、参考にしてみてください。
    ちなみにスーパーさんや量販店さんに並ぶお味噌には、麹歩合はほとんど明記されていません。
    味噌の味を左右する情報がわからないので、選ぶのに困ってしまうのは、
    この理由が一番大きいと思います。
    目安としてですが、麹歩合の高い味噌は甘味と香りがやや高く、
    麹歩合の低い味噌はコクと旨味がやや多いのが特徴です。

    3.仕込む時期 


    味噌を仕込む時期によっても大きく変わってきます。
    一般的には秋口から春先までの気温が低い時期に仕込むのが良いとされています。
    特に秋に収穫したとれたての米や大豆を使うことにより味噌もより一層おいしくできるのです。
    また、暑い時期だと水や空気中に雑菌が繁殖していてあまりいい状態ではなく、
    気温が低くなると雑菌の繁殖が抑えられ、良い状態で味噌を造る事ができるのです。
    また、ゆっくり時間をかけて発酵させた方が、味に深みがでておいしく仕上がります。
    もちろん、味噌は一年中仕込む事ができますが、
    暑い時期に仕込んで
    しまうと気温が高いので最初から急激に発酵してしまいます。
    麹菌達もびっくりしてしまいますよね^^
    熟成期間が短くてすむというメリットもありますが、
    長期に渡って熟成させたお味噌の方が機能性も高くなり、
    味噌の深い旨味や味わいも増すと言われています。

    4.熟成期間 


    味噌の色の違いは、原材料や加工の方法によっても差がありますが熟成期間の違いによることが大きく、熟成期間が長いほどいわゆるメイラード反応(※糖とアミノ酸が反応して、茶色く色づきさまざまな香り成分を生む反応)によってできる褐色物質、メラノイジン量が増して色は濃くなっていきます。ちなみにメラノイジンは強い抗酸化力を持つことが知られていて、
    一般的に、熟成期間が短ければ淡い色、熟成期間が長いほど色は濃くなるため、
    味噌の抗酸化性の強さは、色の濃淡が大きく関与しているのではないかと考えられています。
    みその発酵・熟成には段階があり、
    麹菌の酵素による分解作用を中心とした「第1段階」があり、
    続いて微生物の生育環境が整い乳酸菌や酵母が活動する「第2段階」の発酵というプロセスを経て、
    微生物の生体作用によって行われるものではなく、
    生成された様々な成分が時間を掛けて化合、分解、重合など、
    比較的時間が掛けて成分変化がおこる「第3段階」の調和する熟成へと進んでいきます。
    発酵によって生成された様々な物質が新たに化合することによって、
    味噌の美しい色、香り、深い旨味や味わいが作られていくのです。
    みその発酵熟成は多くの作用反応が同時並行して起きるとされており、
    極めて複雑多岐にわたるものなのです。
    熟成期間によって、機能性も美味しさも違いが生まれます。
    だからと言って長ければ長いほど良いというものではありません。
    長すぎる熟成は「過熟」となり、色が濃くなる過ぎたり、
    酸味が出てきてしまったりと、みその品質を劣化させる場合もあります。

    5.塩分濃度 


    みそ仕込みに使用する塩は、調味を目的として使用するのではなく、
    非対塩性の微生物を抑え込み、みそにとって有用な微生物の活動を助ける為に使用します。
    みそを美味しく発酵させるために使用するので、その使用量はとても重要な意味があるのです。
    単純に味噌を甘くするために塩分控えめや減塩といった塩の使用量を減らすという発想は
    味噌という発酵食品を造るという観点ではナンセンスな考え方になるのです。
    その考え方に基づいて、地方や仕込む時期、商品企画に応じて多少の違いはありますが、
    その塩分濃度によっても甘味といった観点での違いが生まれてきます。

    6.仕込む地域や場所 


    仕込む時期でも触れましたが、味噌は温度によってメイラード反応(※糖とアミノ酸が反応して、茶色く色づきさまざまな香り成分を生む反応)のスピードが変化します。
    そして温度によって、分解、発酵、熟成のスピードも、
    活動する微生物の種類やその働き方にも差が出てくるので、
    日本の中でも地域によっても気候風土による違いが生まれますし、
    仕込む蔵や地域に常在する空気中の菌の影響も少なからず受けるのです。

    7.環境と醸造方法 


    味噌の仕込み醸造に使う容器も古くは木桶も使われていましたが、
    近年は衛生上の問題や材料や技術上の問題から、
    ホーローやFRP(強化プラスチック)が使われることが多くなっています。

    木は断熱性と保温性が高いので、外気温が変わっても一定の温度を保つことができるので、
    発酵において、様々な菌にとって住み心地がよく、
    菌が活発に活動するというメリットも多いと言われています。
    また、熟成期間中の温度管理によっても、大きな違いが生まれます。
    加温して発酵を促す温醸という製法もあるし、逆に気温が高い時期にメイラード反応を抑え
    色づきを抑制するために減温したりする場合もあります。
    それに対してその土地固有の気候風土の中で、
    自然の温度に任せてじっくりと熟成させる製法を天然醸造と言います。


    このように味噌の善し悪しは様々な要因が複合的に重なりあって、
    多種多様な味噌が出来上がります。
    発酵のメカニズムをみると、実に緻密に組み立てられ、機能し調和していることも実感します。
    日本の伝統発酵食品としての「味噌の科学」であると言えるのではないでしょうか?